[会員コラム #1] 商標の指定商品について(事例紹介)
みなさん、こんにちは。
特許情報サービス業連合会で理事を務めております、弁護士の芝田麻里です 。
本日は、「もっと早くにきちんと商標登録しておくことをお勧めできていればよかったな……」と痛感した事例についてお伝えしたいと思います 。
■今回のポイント
今回の事例でお伝えしたいポイントは以下の2点です
・商標の「指定商品・指定役務」とは?(権利が及ぶ範囲の決め方)
・商標申請のタイミングは?(「もう遅いかも」と思っている方へ)
■事案の概要
今回ご紹介するのは、オリジナルブランドを展開するAさんと、その製造委託先であるB社とのトラブルです。
Aさん(ご相談者):自社のロゴマークを付した洋服やバッグなどを販売
B社(製造委託先):Aさんから製造を請け負っていましたが、Aさんの許可なくロゴ入りの商品を自社で販売し始めてしまいました
■時系列
2017年頃
AさんがB社へ製造委託を開始
Aさんの商標(ロゴマーク)を他社向けの製品に使用しない旨の契約を交わす
2020年頃
ブランドに人気が出ると、B社が勝手にAさんのロゴ入り洋服やバッグ、クッションを第三者に販売
2022年頃
AさんはB社の行為を契約違反と主張するも、契約の拘束力が弱く主張が認められなかった
Aさんは慌てて商標登録を申請
2023年3月頃
Aさんは、指定商品を洋服として商標登録完了 → B社に対してロゴを付した商品の販売停止を請求
2023年3月頃
B社は「Aさんの商標権の範囲はバッグやクッションには及ばない」と反論しバッグやクッションについて権利行使できず
その後
この時点でAさんからの相談を受け、Aさんが販売する可能性のある商品について商標登録申請
■本事例での問題点
この事例ではAさんはBさんの行為により不利益を受けることとなってしまいました。
問題点として以下の点が挙げられます(ここでは商標についてのみを考えます)
・Aさんは早期にロゴマークについて商標権を取得すべきだった
理想的なタイミングとしては、ロゴマーク作成時~Bさんへの委託時
・Bさんの行為に気づいた後の商標申請時の権利範囲(指定商品)が適切でなかった
■なぜAさんは登録商標の権利行使ができなかったのか?
商標権の範囲は、登録した「商標(マーク・ロゴ)」と「指定商品・サービス(区分)」の組み合わせで決まり、それらが同一または類似する範囲に及びます。
2022年3月にAさんは「洋服」を指定商品としてロゴマークについて商標登録を受けました。しかしながら指定商品に「バッグ」、「クッション」等については指定していませんでした。商標権の権利範囲の判断において、「洋服」と「バッグ」、「クッション」は同一でなく、かつ類似でもないと判断されます。
つまりB社の主張は正しかったことになります。
Aさんは、2022年あるいは2023年の商標出願の際に適切な指定商品を指定できていればよかったことになります。この時に私からアドバイスできていればと悔やまれました。
■知っておきたい商標権のポイント
今回の事例では残念ながら商標権をうまく活かせなかった事例でしたが、商標権について以下のポイントを知っていただき活かしていただきたいと思います。
・商標権は商品やサービスを販売したりした後でも取得できる(ただし他者も取得できることに注意)
今回の事例では、AさんはB社の行為を知ってから商標出願をし、商標権を取得しています。ブランドが育ってから、相手の行為を知ってからでも権利をとることができます。ただし、すでに他社に先回りして登録されてしまっているという最悪のケースも起こり得ます。他社に取られてしまう前にできるだけ早いタイミングで権利を押さえることが原則です。
・商標権の権利は同一または類似の範囲に及ぶ
もし商標権が「同一」のものしか守られないと、少しだけデザインを変えたロゴを使われたり、隣接するジャンルの商品にロゴを使われたりする「便乗」を防げません。Aさんは当初契約でロゴマークを保護しようとしましたが、最適な指定商品の商標権によって保護する範囲をより広くすることができます。
■まとめ
商標権は非常に有用な権利でありますが、その「守備範囲」、「タイミング」を間違えると活用することができなくなるだけでなく、一歩間違えると、思わぬ隙を突かれてしまいます。
不安に思われたら、ぜひお早めに専門家へご相談ください。当連合会メンバーにも優秀な専門家がおりますのでお問い合わせいただければと思います。
<著者>
芝田総合法律事務所 弁護士 芝田 麻里 (当組合理事)
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